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波と文学

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夏のはじまり。

               

車でちょうど一時間半。年の初めに「今年こそよろしくお願いします」と言葉を交わして以来、なんだかんだ毎月行くやら来るやらしている友人の家へ一人で。ダイニングテーブルで長い間他愛も無い話を散らかしていると夜の七時半が過ぎていた。「そろそろ川で泳ぐ?」という友人の言葉の意味が最初はわからなかった。初夏と呼ぶには数日早い梅雨の夕暮れ雨上がり、なぜかバスタオルを持って、川へ。足だけを冷たい水の中に浸けて「やっぱりまだ寒いよぉ」と情けないこと(当たり前のこと)を言う俺の後ろで友人は既に全裸になっていた。あ、阿呆が居ると思った。大声で「誰か助けて阿呆がいるよ!」と叫びたかった。

小刻みに震える午後七時四十五分の俺と、
なぜか楽しそうに雨上がりの川の強い流れに身を任す阿呆。
奥歯がカチカチなる俺とキャキャキャと歓声をあげる阿呆。
そろそろまばらな星を見上げる俺と、完全なる魚と化した阿呆。
しばらく眺めているうちに、
おかしな感情が湧き始めた、あれ、これ阿呆なのは俺かな?

泳ぐが正解で震えるが間違いで楽しむが正解で戸惑うが不正解で遊ぶが正解で遊ばないは間違いだろう、いつだって。そして俺も全裸になった。空の上から僕らを指さして「あ、阿呆がいるよ」と笑う神様の声が聞こえた気がした。僕にとって33回目の夏は夜に始まった。
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