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波と文学

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浜松日記01

何かが出た、シャーと出た起きて起きてちょっと。と言って揺り起こされた。日付は3日、月曜の午前3時過ぎ。妻は意外と冷静だった。二人でリビングに移動して、病院から配布されたお産マニュアルをめくり、現状の把握と、これからの流れを確認した後、念のため病院にも連絡を入れた。すると「これから来てください」とのこと。マジすか眠いんですけど。と思ったが、そんなこと口にして余計な喧嘩を増やすことは避けた。妻が、おさむさんに車の鍵を借りに行った。僕は玄関から外に出て煙草を吸うことにした。とりあえず、長い夜になるのかしら、と、観念して。まあ、暑くなったら嫌だからサンダルで行こ、と考えた。

病院までは30分かからないくらいか。昼間はもっと遠く感じたのだが、早く着いた気がした。妻は助手席でお腹を撫でながら、ここが私が通っていた高校ぉ~続きまして、ここが中学ぅ~ハイ、ここが小学校ぉ~などと、少女時代の思い出を聞かせてくれた。緊張感の無い女め。と誇らしく思った。

病院に着くと真夜中の受付担当から妊婦を車椅子に乗せるように指示を受けた。ドスンと腰掛け、顎でエレベーターを指す妻のふてぶてしさに女の真髄を垣間見た気がした。へこへこと車椅子を押す深夜4時の自分が妙に間抜けに思えた。結局、それから病室に通されて、そのまま入院が決まった。陣痛は無いらしく、相変わらずいつ産まれるのかもわからない状況。

鳥がちんちんと鳴き東の空が白けてきた頃、慣れない町の慣れない車を運転して、独り、妻の実家へと戻ることにした。
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