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波と文学

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あの風にのって

                             


小雨の中、海原で、板一枚にまたがって漂う。

眼前から、自分の背丈の二倍はあろうかという荒い波が迫ってくる。思わず息をのむ。

こんなとき、もしも自分に上等なスキルや十分な経験、
或いはそれらから滲み出る上質な「勘」のようなものがあれば、何てことはない。
しかるべき手段をもって、その波を乗りこなし、テンション上がればいいじゃない。

しかし、私はペーペーの、トーシロの、32歳の、オールドルーキー。しかも軟弱で、
ひょろひょろで、不器用で、嘘つきで、無責任で、体力不足で、甲斐性なし。
当然、海の中の満足なスキルも経験もないから、勘なんて働かない。不安である。
そして不安が生みだす「恐怖心」がこれ半端ない。八方塞がり、ただただ孤独。
さっさとお家に帰って温かいお風呂にでも入って、
珈琲を淹れて、モンハンでもしようかと思う。しかし、
それでは進歩や上達がないことを知っている。なぜなら32歳であるからね、私は。
海の上の経験値は心細くても、浮世の暮らしの経験値は32年分あるのです、
だから知っています。逃げるのは簡単ですが、挑むことで得られる果実があるのです。

そのとき、南の方角から雨雲がもくもくとやってきてバシャバシャと大粒の雨を降らせた。
波がなお一層高くなり、荒れた。よし、これは逃げようと思った。

だいたい「逃げちゃダメ」なんて誰が決めたんだ。碇シンジか、
彼は人類存続の使命と、秘密結社の野望を託された少年だから仕方ないかもしれないが、
古本屋で、タコ焼き屋で、詩人の私にはまるで関係のないことです。

何かが起きたときに気軽に「逃げるな」という大勢のヤツに言ってやりたいよ私は、

「じゃあさ、君は何かから“本気で”、逃げたことがあるのかい?」ってね。


本気で逃げることの厳しさや美しさを知らないヤツこそ、
この乱暴な資本主義経済の荒波に飲まれちまうぜ。だから私は逃げるのです。
東シナ海の荒波に飲まれる前に、颯爽と、愉快に、あの風にのって。






peace













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