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波と文学

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うどーん

知れば知るほど奥が深く、
神秘的で美しいのはこの惑星に存在する全ての命と、うどんである。


近頃はまるで、ナイト・オン・ザ・プラネットでタクシー運転手を演じたウィノナ・ライダーの肌のように白く透き通ったうどんを求めて、のれんをくぐる夜の始まりを過ごしている。


昨夜のこと、
いつものように妻と窓際の席につき、
今夜のウィノナを決めて、
熱いお茶と給仕の婆を待っていると、
抜群のタイミングで奥から出てきた給仕の婆から眩い光が溢れているのが見えた。
それは誰もいない海の水面にしゃらしゃらと漂う5月の光のようだった。1月の終わりとは思えない光に包まれている給仕の婆を見て、ははん、さてはこれはうどんの神様の使いだなと、直感で確信したウェルカム。



うどんの神様の使いは、まるで始めからそこに"在った"かのようにさりげなく完璧な位置にお茶を置けば、およそ婆らしからぬ満面の笑みで「何になさいますか?」と囁く。
妻と一緒でなければ恋に堕ちてもおかしくないほどあどけない笑顔、さすがだなと思った。コシが違う。

この時を逃がすまいと僕は思った。

ここぞとばかりに、
近頃の疑問について尋ねてみようと決心して、お目当てのウィノナを告げた後に「ちょっと聞いてもいいですか?」と続けた。
すると、神様の使いは両手を広げて、
静かに「なんでも聞いて下さい」と答えた。




「あのぉ、とろろを注文すると店によって山芋だったり昆布だったりバラバラなのですが、その、うどん界ではその辺をどういう風にお考えなのでしょうか?オフィシャルの解答をズバッと仰って頂けると大変光栄です。これからも、その、安心して、とろろを、オーダー出来るというか、ストレスが無くなるというか、家族円満というか、はい、そんな感じです」



「とろろは昆布。山芋は山かけ。オススメは釜あげうどんでございます」



なにもかもが完璧だった。



僕の中の不思議や疑問がその一言で全て解けた気がした。食べる前に満腹になった。拍手をしながらブラボーと言った。


ところが、神の使いはその質問だけでは満足いかないのか、通を気取った僕の質問があまりにも愚かだったせいか、とっくに注文は済ませているというのにその場から動かなくなってしまった。知らぬ間に性感帯をくすぐってしまったのかな?


向いの席では妻が笑いを堪えながらも、
貴様の尻は貴様で拭えアホ。
何がうどんの神様の使いだアホ。
そんなんが阿久根に来るかアホ。
嗚呼、私は腹が減ったアホのせいで。
という冷たい目で僕を見ている。

相変わらず残酷な女だと思った。
給仕の婆も相変わらず動こうとしない。



ちぃっ。
はやく台所に戻れよババァと思った。僕はもう、あんまりうどんも食べたくなくなった。
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