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波と文学

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細い竹の先のブリ。

               


帰宅すると郵便ポストの中に小さな紙片の手紙があって、

「連絡をください。 ウエゾノ ゾノ子」と綴られていた。


一カ月ほど前に、港を散歩中。
左手に虫取り網を持ち、
右手の細い竹先にブリの頭を突き刺して、
そのブリの頭を水中に浸けてぬらぬらと動かし、
それにつられて寄って来た小海老や蟹、小魚を左手の虫取り網ですくうという一風変わった漁を楽しんでいたのが「ウエゾノ ゾノ子さん」なのだ。 
私は、見たことのないその原始的な“やり方”に唖然として目をちょぱちょぱしながら立ち尽くしていた。
それに付いたゾノ子さんは、
「お、ちょっと待ってね」と言い、
岩陰から別の虫取り網と細竹(ブリ、セット済)を取り出して「はい、これ使って」と手渡してくれた。


まるで、僕が今日ここに来ることが決められていたかのような手際の良さに感心すると同時に、見ず知らずのヒゲ眼鏡に対して、心をフルオープンで接してくれるゾノ子さんの天真爛漫な所作に僕はメロメロだった。ゾノ子さんが50歳若かったら2秒で恋に落ちていたかもしれない。それから、僕とゾノ子さんの交流は始まったのだ。ここで、冒頭に話を戻す。

「連絡をください。」という手紙をゾノ子さんは残していったのだが、僕はゾノ子さんの連絡先を知らない。つまりこの場合の「連絡をください」は「私の家に来てください」という意味になる。どうしたのだろうか、小海老がたくさん捕れたのだろうか、などと考えながら僕はゾノ子さんの家に向かった。



「ほら!あなたが探していた畑、見つかったわよ!」ゾノ子さんから開口一番にそう言われた。



この辺境に引っ越して来て半年、ようやく、暮らしに土の匂いが漂い始めた。
僕はとても嬉しく思う。ありがとう、ゾノ子さん。


その気持ちを必殺の“玉ねぎ”で表現する為に、
一度帰宅して妻と玉ねぎを連れてゾノ子さんの家に向かうことにした。

「ありがとう!ゾノ子さん!お礼に玉ねぎ持って来たよ!」と言うのと同時に、
土間に別の玉ねぎが10個程度転がっていることに気付いて非常に気まずかった。
妻は舌を出して可愛い顔で誤魔化していた。
「これは買ったやつなの!買ったやつなの!」という、
ゾノ子さんの意味のわからないフォローがまた骨身に沁みた。

なにはともあれ。暮らしは順調だ。






・備忘録

5/17 鹿児島市内からマイティが訪ねて来てくれた。
たまたま店に来ていた「ノータリン先輩」と大いに盛り上がっていた。

5/18串木野からゾンビ君が訪ねて来てくれた。
ブラザーと言って缶珈琲を渡してくれた。半年ぶりの再会。
痩せます!と声高々に宣言していたアイツは前以上に肥えていた。


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